mft /口腔筋機能訓練(MFT)

    口腔筋機能訓練(MFT)

    MFT(口腔筋機能療法)とは、歯並びを取り巻く筋肉の働きを整えるための訓練法です。

    歯は、内側からは下の、外側からは唇や頬の筋肉の圧力を絶えず受けています。 これらの筋肉の働きに偏りがあると、出っ歯、開咬などといった不正咬合を引き起こしてしまうことになります。

    お口周りの筋肉のバランスを整えることにより、バランスのとれたお顔立ちとキレイな歯並びを作ることが期待できます。

    MFT(口腔筋機能訓練)の矯正歯科、小児歯科以外の分野への応用

    口腔筋機能訓練(MFT)

    MFTは主に、矯正歯科や小児歯科において実施されてきましたが、最近ではほかの分野においても応用されるようになりました。

    例えば一般歯科では、MFTにより口呼吸を改善することでつめものや被せ物が外れたり割れてしまったりすることを防ぐほか、知覚過敏の軽減や歯周病の改善などにも効果があるとして注目されています。

    また、唾液の分泌を促進させることで口腔内の自浄作用を高め、むし歯や口臭の予防につなげたり、ドライマウスを軽減させることにも応用されています。

    さらに歯科の分野以外でも、MFTを笑顔の改善に応用したり、高齢者や障碍者の口腔機能の改善に役立てたりする試みも報告されています。

    • 歯周病の改善や虫歯の予防に
    • 舌痛症や知覚過敏の軽減
    • 口腔内の自浄作用の増進
    • ドライマウスの軽減
    • 高齢者の咀嚼機能低下の防止

    MFT(口腔筋機能訓練)による機能強化が必要なケース

    「食べる機能(噛む・飲み込む)」の発育不全

    口腔筋機能訓練(MFT)

    物を噛んだり、飲み込んだりする機能(咀嚼嚥下機能)は、生まれながらに身についている先天的な能力ではなく、生後の学習によって後天的に発育を遂げる能力です。

    一般的には、生後5~6ヶ月ごろから口唇を閉じ、舌を動かして流動食を摂取することを覚え、やがて軟食を舌や歯肉で押しつぶして飲み込む時期を経て、歯で普通食を咀嚼し・嚥下することができるようになります。

    しかしこの学習過程が障害を受けると、「噛めない」「飲み込めない」などの症状が現れてきます。

    このような場合には、MFTによって再学習をさせてあげる事により、正常な咀嚼嚥下機能を得ることが可能です。

    口呼吸(扁桃肥大・アレルギー)

    口腔筋機能訓練(MFT)

    口蓋扁桃に炎症などがある場合、痛みのために無意識に舌を前方に出してしまうことがあります。

    また、アレルギー性鼻炎などで常に鼻が詰まっている状態だと、鼻で呼吸することが困難なため口で呼吸をすることが癖になってしまいます。

    その結果、唇と舌の位置や圧力のバランスが崩れ、歯並びの悪化やお顔のゆがみが生じてしまう場合もあります。

    このようなケースでは、MFTを行うにあたり、耳鼻咽喉科の診査診断を踏まえ、症状に応じて耳鼻咽喉科やアレルギー科と連携しながら治療を進める必要があります。

    舌小帯短縮症(舌小帯強直症)

    口腔筋機能訓練(MFT)

    舌小帯が短いなど、舌小帯に異常がある場合には、舌の運動範囲が制限されてしまうため、物がうまく飲み込めない、上手に発音ができないなどの症状が現れる場合があります。

    舌小帯の異常は訓練によってある程度改善出来る場合もありますが、ケースによっては手術が必要になることもあります。

    指しゃぶり(吸指癖)、その他の口腔習癖

    口腔筋機能訓練(MFT)

    指しゃぶりは最も高い頻度で発現する口腔習癖です。胎児期から認められ、乳幼児期では、生理的な習慣として認知されています。

    乳児期の指しゃぶりは乳児の発達過程における生理的な行為なので、そのまま経過をみればよいとされていますが、幼児期後半、特に小学校入学以降も癖が治らないようであれば歯並びへの悪影響も心配されます。

    MFTによるトレーニングのみで癖が改善できる場合もありますが、場合によっては歯列を拡大するなどといった矯正歯科治療が必要になることもあります。

    →指しゃぶり(吸指癖)・爪を噛む(咬爪癖)について

    骨格の異常

    骨格の異常はお口周りの筋肉の正常な発育を妨げてしまいます。

    例えば、骨格性の下顎前突症(受け口)や開咬などの症状がある場合などは、筋機能訓練だけでは改善が難しいことがほとんどですので、矯正歯科治療と併用して症状の改善を図る必要があります。

    巨舌症

    巨舌症とは、通常よりも舌が大きいことによって歯並びに影響を与えてしまう症状のことを言います。

    一般に、食べ物がうまく飲み込めない患者さんは舌が大きい印象がありますが、これは舌の位置が前に出ていること、かつ舌の筋肉が弛緩している事によるものが多く見受けられます。

    これらの症状の場合、MFTによって舌の位置と筋肉を鍛えることで改善が可能です。

    しかし、巨舌症の中には舌筋繊維がもともと太い先天性物である場合や、全身疾患とのかかわりのある場合もありますので、その場合は、外科的矯正や舌縮小術、全身疾患治療と合わせて訓練を行う必要があります。

    実際のトレーニング方法

    • 舌を正しく動かす練習
      舌を正しく動かす練習

    • 舌の筋力をつけるトレーニング
      舌の筋力をつけるトレーニング
    • 正しい飲みこみ方の練習
      正しい飲みこみ方の練習

    • くちびるの動かし方のトレーニング
      くちびるの動かし方のトレーニング

    トレーニングには、患者本人の「やる気」が何より重要です。

    口腔筋機能訓練(MFT)

    MFTは、患者本人やる気と興味、保護者やご家族のご協力がとても大切です。

    一般的には、MFTは小学校低学年から指導が可能と言われておりますが、これは8~9歳以下の患者の場合、治療の必要性をよく理解できていない場合も多くモチベーションを保つのが難しいとされているためです。

    しかし当院では、患者本人のやる気と興味、保護者の協力が得られる場合には小学校入学前の患者さんであってもトレーニングを行い、実際に効果が得られています。

    最初は簡単なレッスンや補助器具を使ったトレーニングから始め、目標の達成度に応じて徐々にレベルアップさせていきます。

    受験や反抗期のために一時的にトレーニングが停滞する場合もありますが、焦らずに様子を見守りながら、患者本人のペースなわせて治療を進めることが大切です。

    時期や治療法については一人ひとり違いますので、少しでも気になることがあればお気軽にご相談ください。